はじめに:その“飲み会の精算”、本当に納得していますか?
「会社の飲み会で、精算額を勝手に決められた」
「給料の額をしつこく聞かれた」
「頼まれてお金を貸したが、返ってこない」
こうした金銭に関する違和感、実はすべて「マネハラ(マネーハラスメント)」の可能性があります。近年、パワハラやセクハラに続く新たな職場の問題として注目されているのが、この“お金に関するハラスメント”です。
この記事では、マネハラの定義や会社・飲み会で起きやすい背景、具体的な事例とともに、企業・個人ができる対策を詳しく解説します。
マネハラ(マネーハラスメント)とは?
マネハラとは、「金銭的な嫌がらせや不公平な扱い」のことを指します。職場内や社外活動(飲み会、イベント)で行われる以下のような行為が該当します。
よくあるマネハラの具体例
マネハラの例 | 説明 |
給料やボーナスの詮索 | 「いくらもらってるの?」と繰り返し聞かれる |
お金の貸し借りの強要 | 上司や同僚から借金を頼まれ、断れない雰囲気に |
飲み会での不透明な精算 | 「多めに払って」「これぐらい出して当然」と言われる |
イベントの費用負担の偏り | 幹事や若手が費用を肩代わりさせられる |
金額自体が問題ではなく、“断りづらい関係性の中で強要される”ことが、マネハラの本質です。
なぜマネハラが職場や飲み会で起きやすいのか?
年功序列と「空気を読む」文化
日本企業では、上下関係や年功序列が根強く、若手社員が上司にNOと言いづらい風土があります。「空気を読んで当然」という無言の圧力が、マネハラを助長する要因になります。
飲み会が“職場の延長”になっている
会社の飲み会や社員旅行など、プライベートのようで実は職務の延長線上にある活動では、立場の上下がそのまま影響します。その結果、金銭的な要求も断りづらくなるのです。
精算や費用負担のルールが曖昧
「とりあえず払っておいて」といった曖昧な精算方法や、「あとで割るね」と言われたまま放置されることが、不満や不信感につながります。
実際のマネハラ事例とその影響
ある新入社員は歓迎会で「若いんだから多めに出して」と言われ、断れず支払ったところ、それ以降も同様の扱いが続きました。
また、同僚に「今月厳しいから貸して」と頼まれ、お金を貸したが返ってこなかったというケースも。こうした体験は、信頼関係の崩壊や職場離れにつながりかねません。
マネハラを防ぐために企業と個人ができること
【企業側の対策】
マネハラの明確な定義とルール作り
「給料の詮索」「飲み会での不透明な精算」「貸し借りの強要」など、マネハラの具体的な行為を示し、ハラスメント研修に組み込みましょう。社員が「どこからがNGなのか」を理解できる環境作りが重要です。
相談窓口の設置と周知徹底
マネハラ被害は声を上げづらいため、匿名で相談できる窓口を設け、イントラネットや社内メールなどで定期的に周知することが有効です。第三者機関の活用も検討しましょう。
飲み会・イベント費用の一部補助
社員の金銭負担が過度にならないよう、企業が費用の一部を補助する制度を導入することも効果的です。参加への心理的・金銭的ハードルが下がり、トラブルの予防につながります。
【個人側の対応】
給料の話はやんわりかわしてもOK
「詳しくは話していないんです」「家計はパートナーに任せてて…」といった、曖昧かつ角の立たない断り方を覚えておきましょう。無理に答える必要はありません。
お金の貸し借りは原則断るか記録を残す
「お金はトラブルのもとなので…」と丁寧に断る勇気を持ちましょう。どうしても貸す場合は、LINEやメールで証拠を残すなど、後に備える手段を講じてください。
飲み会では予算の共有と透明な割り勘を
幹事任せにせず、事前に「会費はいくらか」「どんなプランか」などを共有しましょう。LINEグループなどを使って領収書を共有するのもトラブル防止に有効です。
無意識のマネハラを防ぐ「気づき」の大切さ
マネハラは、意図的に加害しようとしなくても起きる可能性があります。「親しみを込めて聞いただけ」「昔は当たり前だった」そんな感覚が、現代ではハラスメントと受け取られることも。
企業も個人も、「自分も加害者になるかもしれない」という視点を持つことで、より良い職場づくりが実現できます。
まとめ:マネハラのない、安心できる職場を目指して
マネハラはお金というデリケートなテーマに関わるため、見えにくく、対処もしづらい問題です。しかし放置すれば、職場環境の悪化や人材流出につながりかねません。
明確なルールと周知、相談しやすい雰囲気作り、そして一人ひとりの配慮。この三つが揃うことで、マネハラを防ぎ、健全で信頼できる職場が実現します。
今こそ、「お金のハラスメント」に向き合うタイミングです