公益通報の保護対象とは？内部通報制度との違いをわかりやすく解説

公益通報とは？その定義と目的をわかりやすく解説

公益通報とは、職場などで発見した法令違反行為について、行政機関や監督機関などに通報する行為を指します。目的は、違法行為を早期に是正し、社会全体の利益を守ることです。企業や組織内の内部通報にとどまらず、通報内容が社会的な影響を持つ場合に「公益」と認定され、法律上の保護対象になります。

公益通報者保護法は2006年に施行され、2022年には改正されました。この法律の目的は、不正を通報した人が職場で不利益な扱いを受けないよう保護することにあります。過去には通報を理由に解雇や報復を受けたケースがあり、そうした背景から法律による保護が整備されました。

企業不祥事が相次ぐ中、内部からの通報は問題解決の鍵となっています。消費者や投資家からの信頼を維持するためにも、企業にとって公益通報は重要な制度です。近年ではESGやコンプライアンスの観点からも、制度整備が求められています。

保護されるのは正社員だけでなく、パート、派遣社員、退職者、取引先の従業員も含まれます。雇用形態にかかわらず、業務を通じて不正を知り得た立場の人が通報者として認められれば、保護の対象となります。

通報内容が保護されるには、一定の違法行為である必要があります。例えば、食品衛生法、労働基準法、不正競争防止法など、法律で定められた法令違反が対象です。単なる職場の不満や人間関係のトラブルは保護されません。

通報を行う相手や方法も重要です。企業内の通報窓口、行政機関など正当な相手への通報であり、かつ「真実と信じるに足る理由」があることが求められます。虚偽や不確かな情報に基づいた通報は保護されない可能性があります。

内部通報制度は、企業内部での不正を社員が組織内の窓口に通報できる仕組みです。目的は、社内での早期対応と問題の収束にあります。企業によっては第三者に窓口業務を委託する場合もあります。

内部通報は企業の自主的な制度で、法律による保護が必ずしも伴うわけではありません。一方、公益通報は法律に基づき、不利益取り扱いの禁止などの保護が与えられます。また、公益通報では社外（行政など）への通報も認められます。

改正公益通報者保護法により、従業員300人超の企業には内部通報制度の整備が義務付けられました。多くの企業が窓口設置や運用体制の強化に取り組んでいます。形だけでなく、実効性ある運用が鍵となります。

公益通報者保護法では、通報を理由にした解雇や減給、異動などの不利益な扱いが禁止されています。違反した場合、企業には損害賠償責任が生じる可能性もあります。通報者が安心して声を上げられる環境づくりが求められています。

匿名で通報した場合でも、内容が具体的であれば調査されることはありますが、法的保護という観点では不十分です。保護を受けるには、通報者が特定される必要があります。そのため、匿名通報では限界があるといえるでしょう。

実際に通報を行い、不正が是正されて通報者が保護された事例も存在します。一方で、報復行為や職場での孤立といった課題も残されています。制度があっても、実際に安心して使える環境整備は今後の課題です。

企業は不正を防ぐと同時に、通報者を守る体制も整える必要があります。通報者の保護が不十分であれば、企業の信頼失墜や訴訟リスクにもつながります。公益通報制度の整備は、重要なリスク対策の一つです。

通報窓口の運用では、アクセスのしやすさ、プライバシーの保護、迅速な対応が不可欠です。内部窓口に加えて、外部の第三者機関による受付も効果的です。通報者が安心して利用できる信頼ある体制が求められます。

制度があっても、社員がその存在や意義を知らなければ意味がありません。定期的な研修や情報提供を通じて、通報制度の理解と活用を促すことが必要です。これにより、組織の透明性と信頼性が高まります。

公益通報者保護法は、社会の変化に応じて改正が続いています。今後も、保護の範囲拡大や企業の義務強化が進むと見られており、企業としては法改正に柔軟に対応する体制づくりが不可欠です。常に最新情報をキャッチし、制度のアップデートを怠らないことが求められます。

通報者も企業も、制度を正しく理解し、適切に活用することで、相互に信頼できる環境が生まれます。公益通報は、単なるリスク管理ではなく、組織の健全性と社会的責任を果たすための手段です。正しい知識が、安心して働ける職場づくりの第一歩となるのです。