国民民主党の幹事長として党運営の中枢を担う榛葉賀津也(しんば かづや)議員。地方政治の現場から国政、そして国際舞台まで幅広い経験を積み上げてきたその歩みは、現代日本政治における貴重なリーダー像を体現しています。
この記事では、榛葉幹事長の生い立ち・学歴・政治経歴・政策理念に至るまで、豊富な実体験に基づいたその政治家としての軌跡を紐解いていきます。
生い立ちと人格形成:原点は「地域」と「労働」
榛葉氏は1967年4月25日、静岡県菊川市(旧・菊川町)に生まれました。戦争遺児である両親のもと、厳しい家庭環境で育ち、幼少期には5歳から牛乳配達を8年間続けるなど、地域社会に密着した生活を送っていました。
この経験が、後の中小企業支援や地方経済振興政策の原点となっています。
高校では掛川西高校野球部に所属し、レギュラーではなく三塁コーチャーとしてチームを支える立場に徹しました。「縁の下の力持ち」であることを誇りにし、組織運営や調整型リーダーシップの基礎を育んだ時期でもあります。
国際感覚の獲得と政治家を志した原体験
大学は米国オハイオ州・オタバイン大学に進学し、政治学と国際問題を専攻。その後イスラエルに留学し、テルアビブ大学とヘブライ大学で学びます。
この留学中、兵役義務に就く同世代のイスラエル人と交流し、命をかけて国家を守る現実を目の当たりにしたことが、榛葉氏にとっての政治家としての覚悟を決定づける契機となりました。
現地で見聞きしたパレスチナ問題や紛争解決のプロセスは、後の外交・安全保障政策に大きな影響を与えています。
地方政治から国政へ:現場に根差したキャリア
榛葉氏は1994年に地元・菊川町の町議会議員に初当選。茶農家との対話を重視し、地域の農業振興や茶産業支援に尽力しました。ここで得た経験が、後に農業政策・地方活性化政策の柱となります。
そして2001年の参議院選挙(静岡選挙区)で初当選を果たし、以降4期連続で国政の場に立ち続けています。

引用:国民民主党HP
外交・安全保障の第一人者としての実績
榛葉氏は、特に防衛・外交分野のスペシャリストとして高い評価を得ています。
- 2009年:鳩山由紀夫内閣で防衛副大臣に就任
- 2011年:菅直人内閣で再び防衛副大臣を務め、東日本大震災における自衛隊の災害派遣を指揮
- 2012年:野田内閣で外務副大臣に就任。日米同盟の強化や中東外交に携わる
留学時代に培った英語力と中東地域への理解を生かし、エネルギー安全保障や中東和平への日本の関与にも積極的に関わりました。
政策理念:現場主義×国際視野の融合
榛葉氏の政策の根幹には、「現実主義」と「実践主義」があります。
- 幼少期の牛乳配達 → 地域密着の中小企業支援政策
- イスラエル留学 → 安全保障・外交での現場重視のアプローチ
- 高校時代の校則体験 → 若者の社会参加を促す教育改革提案
また、防衛政策では日米同盟の堅持と自主防衛のバランスを重視し、教育では多様な学びの場を保障する制度改革を訴えています。
国民民主党での役割とリーダーシップ
2020年以降、榛葉賀津也氏は国民民主党の幹事長として、党の組織運営や選挙戦略の中核を担ってきました。幹事長は、党の方向性や実務を取り仕切る要職であり、政策決定、候補者の擁立、政党間の連携交渉など、政治活動の“実行部隊”とも言える存在です。
中でも注目されたのが、2024年の衆議院選挙における彼の活躍です。榛葉氏はこの選挙で選挙対策委員長を兼務し、全国の候補者選定から現場での応援演説、メディア対応、戦略的メッセージ発信まで幅広く指揮を執りました。その結果、国民民主党は公示前の7議席から28議席へと大幅に躍進し、存在感を大きく高めることに成功しました。
この成果の背景には、榛葉氏の持つ調整型リーダーシップと実行力があります。彼は声高な対立やパフォーマンスよりも、「対話と粘り強い交渉」を重視する政治スタイルを一貫して貫いてきました。このスタンスは、若き日にイスラエルで学んだ**「対決より解決」**という紛争解決の哲学に根ざしています。
党内では、過激な発言や派閥的な動きとは一線を画し、冷静で着実な合意形成力に長けた穏健派として高く評価されています。玉木雄一郎代表との関係性も極めて良好であり、代表がビジョンを示し、幹事長である榛葉氏が現場でその実現に向けて調整・実行を行うという理想的な補完関係が築かれています。
また、榛葉氏は単なる組織管理者にとどまらず、**地域ごとの実情を把握した上で候補者ごとに柔軟な戦略を展開する“現場力”**にも長けており、その実践的な能力は多くの地方議員や党関係者から厚い信頼を集めています。
現在の重点政策分野
幹事長として、榛葉氏は次のような分野に注力しています:
- 安全保障:日米同盟の深化とサイバー防衛・宇宙領域対応の強化
- 経済政策:中小企業支援と地方創生、DX推進
- 外交:中東諸国とのEPA(経済連携協定)交渉など
- 教育改革:グローバル人材育成、奨学制度の拡充
- 農業振興:茶産業の輸出促進と担い手支援
評価と今後の展望
榛葉賀津也幹事長は、その多彩な経歴と一貫した現実主義的な政治スタンスにより、政治評論家やメディア関係者の間で高い評価を受けています。特に注目されているのは、国際感覚と地域密着の両立という希少なバランス感覚です。
国際舞台での経験、特に中東問題やエネルギー外交に関する知見を持ちながら、一方で地元・静岡の茶農家や中小企業と密接に向き合い続ける姿勢は、「大局を見ながらも足元をおろそかにしない政治家」という評価に繋がっています。このようなグローバル×ローカルの視点を併せ持つ政治家は、日本の政界では極めて珍しく、政策の実効性と説得力において群を抜いていると言えるでしょう。
今後の展望として、榛葉氏は日本が直面する構造的課題、特にデジタル時代のガバナンス改革と地域産業の持続可能性確保に力を入れていく姿勢を明確にしています。
ガバナンス改革への取り組み
行政のデジタル化や縦割り構造の打破をはじめとする「統治の在り方の再構築」を課題とし、より機動的かつ柔軟な政治・行政体制への変革を提唱しています。これには、地方自治体の権限強化や住民参加型の政策決定プロセスの導入などが含まれ、「市民に開かれた政治」への転換を目指すものです。
地方経済のDX支援
また、榛葉氏の地元・静岡の茶産業を含む地方の伝統産業は、いまやデジタル化の波に乗り遅れれば衰退の危機に直面します。榛葉氏はこの問題に強い危機感を持ち、中小企業・農業・伝統産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を具体的な政策として推進。IoTやAIを活用した生産性向上や、EC市場へのアクセス強化、後継者問題への対応など、現場に根ざした支援策を構想しています。
政治的な立ち位置と期待
現在の国民民主党内では、党の重鎮として信頼されているだけでなく、今後の政界再編や連携のキーマンとしても注目されています。特定のイデオロギーに偏らない中道的スタンスと、対話による合意形成力を兼ね備えた榛葉氏は、今後、政党間をつなぐ「橋渡し役」として、重要な局面でその手腕を発揮する可能性が高いでしょう。
まとめ:多様な経験が生む、現場に根ざした政治家像
榛葉賀津也幹事長の歩みは、地域に根ざした視点と国際的な広い視野を併せ持つ、まさに現代型の実務政治家といえるでしょう。
今後の日本政治において、榛葉氏のようなバランス感覚を持つリーダーがどれだけ活躍できるかが、政界の安定と実効性ある政策の鍵を握るはずです。