スマホが関税対象外? その理由を知っていますか?
2025年、アメリカが発表した「相互関税」政策。これは、相手国が高関税をかけるなら自国も同様の関税を課すという、対抗措置的な意味合いを持つ制度です。
この中で多くの品目が対象とされましたが、意外なことにスマートフォン(とくにiPhone)が関税対象から外されたことが話題になりました。
生活に欠かせないスマホが“例外扱い”された背景には、実はiPhoneの製造構造=グローバルなサプライチェーンが深く関わっているのです。
この記事では、iPhoneの部品がどこで作られ、どの国の企業が関与しているのかをわかりやすく解説しながら、「なぜスマホが関税対象外となったのか」を読み解いていきます。
「Designed in California」だけじゃない、iPhoneの正体とは
iPhoneの裏面に刻まれたおなじみの文字:
“Designed by Apple in California. Assembled in China.”
この一文を見ると、アメリカで設計され、中国で組み立てられている、という印象を受けます。
しかし中身を見れば、その構造は極めてグローバル。iPhoneは世界中の技術・素材・人材の結晶と言える製品なのです。
【図解①】iPhoneの主な部品と製造国一覧
部品 | メーカー | 国 | 特徴 |
プロセッサ(Aシリーズ) | TSMC | 台湾 | 超微細技術で製造される最先端チップ |
ディスプレイ | Samsung / LG | 韓国 | 鮮やかで省電力なOLEDを供給 |
NANDメモリ | Kioxia(旧東芝) / Samsung | 日本 / 韓国 | 写真やアプリのデータ保存 |
DRAM | SK hynix / Samsung | 韓国 | マルチタスク処理の要 |
カメラモジュール | LG Innotek | 韓国 | 高性能なカメラ機能を実現 |
イメージセンサー | Sony | 日本 | 夜景やポートレート撮影の性能に貢献 |
通信チップ | Qualcomm / Broadcom | アメリカ | 5GやWi-Fi通信を制御 |
バッテリー | Sunwoda / Desay | 中国 | リチウムイオン電池を供給 |
組立て | Foxconn / Pegatron | 台湾(工場は中国・インド) | 世界最大級の製造委託会社 |
この表を見るだけでも、iPhoneは一国では作れない製品だということがはっきり分かります。
【図解②】iPhoneの部品供給を世界地図で確認

- アメリカ:Apple、Qualcomm、Broadcom
- 台湾:TSMC(チップ製造)、Foxconn(組立本社)
- 韓国:Samsung、LG、SK hynix、LG Innotek
- 日本:Sony、Kioxia
- 中国:バッテリー供給、組立工場(Foxconn、Pegatron)
- インド:組立拠点の一部
世界地図で見ると、まさに“地球規模の連携”によって1台のスマホが作られていることが一目瞭然です。
なぜアメリカはスマホを関税から外したのか?
アメリカの「相互関税」は、自国産業を守るための戦略の一つです。しかし、iPhoneのように海外の部品や人材に大きく依存している製品に関税をかけると、さまざまな問題が発生します。
① Appleのグローバル供給網が非常に複雑
多国籍企業によって部品が供給されているため、どこか一国に高関税を課すだけでもサプライチェーン全体が混乱します。
② 関税が価格上昇を招き、消費者と企業にダメージ
iPhoneに関税がかかれば価格が上がり、アメリカ国内の消費者も負担増に。結果的にAppleの売上や株価に悪影響を与えかねません。
③ 自国企業を苦しめる“逆効果”
Appleはアメリカを代表する企業。もし関税によって利益が圧迫されれば、雇用や投資、経済全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの理由から、スマホは「関税対象外」とするしかなかったのです。
スマホは“国家間経済”を象徴する存在に
iPhoneはもはや単なる電子機器ではありません。中には、台湾・韓国・日本・中国・アメリカ・インドといった国々の技術と労働力が詰め込まれています。
このような製品に「国産」「外国製」といった区分は通用しません。
むしろ、スマートフォンは“国家間経済”を象徴する存在なのです。
現代の製造業は、ひとつの国だけで完結しない構造になっています。政治や関税の影響を受けつつも、実際の製造現場では「地球規模の協力」がなければ、技術革新も供給も成り立ちません。
つまり、iPhoneとは「グローバル経済がひとつにまとまった姿」と言えるのです。
まとめ:スマホが関税から外れたのは“合理的な判断”
アメリカの「相互関税」政策のなかで、スマートフォンが対象外とされた背景には、以下のような現実的な事情がありました:
- Appleのサプライチェーンは国際的に分散されている
- 多数の国が関与しており、制限が逆効果になる
- 経済や自国企業に対してもリスクが大きい
このような状況から、スマホを“例外扱い”とすることは、政治的にも経済的にも合理的な判断だったのです。
📱 世界とつながる、あなたのスマホ
次にスマホを手にしたとき、その中に組み込まれている部品が、どの国で作られたのかを想像してみてください。
その小さなデバイスの中には、国境を超えた知恵と技術の結晶が詰まっています。
スマホとは、まさに“世界とあなたをつなぐ窓”なのです。